TRIVIA英国の豆知識

パブはイギリスの文化と歴史の結晶である

パブはイギリスの文化と歴史の結晶だ。だが、それがどんなものなのかは意外に知られていない。

パブという略称が文献に現われたのは1865年だが、13世紀頃にはその前身と言うべき「イン」が街道沿いに乱立していた。その時代には驚くほどたくさんの旅行者がいたが旅行をするための環境が整っておらず、未整備な道を苦労して旅行しなければならなかった。馬車等は通れず、馬に荷物をくくりつけてもたかが知れていた。更に道中の深い森には、盗賊や強盗がひそみ旅行者は襲われる危険と常に隣り合わせの状態だった。

このような状況の中で、満足な食事・休息・娯楽を与えること、安心して眠りにつける場所を提供することが「イン」の大きな使命だった。

同じ頃、たいていの村には「エール・ハウス」があり自家製エール(ビール)が売られていた。このエールは麦汁(大麦か他の穀物を水に漬けて発芽させた無発酵モルト)を香り付けの為のホップと共にイースト菌で発酵させたものでアルコール度はかなり低く、良い飲料水がまれだったこともあって赤ん坊を除くほとんどの人々に常飲されていた。

この「エール・ハウス」も今日のパブの前身といえる。

この他、今日でもその名を残す「タバーン」というものがある。現在のパブとの明確な区別は難しいが「タバーン」(TAVERN)はラテン語の居酒屋(タベルナ)の意味であり、英国のパブの大半が料理の提供はランチタイムのみという営業形態をとっていることから、料理の有無で区別するという考え方もある。

ちなみに「イン」(INN)はアングロ・サクソン語で宿屋の意味である。

「イン」、「エール・ハウス」、「タバーン」は時代とともに交ざり合いやがて今日のような人々の集う場所「パブ」が誕生したのである。

パブの歴史を今に伝えるサイン

イギリスのどのパブも、壁から突き出た棒に木の看板がぶら下がっています。それは1300年代に始まり、国王が旅行者の安全のために行ったといわれています。

看板には店の名前とそれに関係する絵が描かれ、動物や乗り物、王冠や教会など実にさまざま。現在は看板の大きさが横3フィート縦4フィートに決められているそうです。

PUBと音楽の深い関係

音楽を国で分けることに意味はないが、ロックが生まれたのはビートルズを生んだイギリスだ。商業的なロックが行き詰まったとき、パンクが生まれたのもまたイギリスだ。そして、その橋渡し的位置づけにあったのがPUBで生まれた音楽、パブ・ロックである。

それは、巨大になりすぎたロックビジネスやスターシステムにストレートに反発するものでもあった。 パブ・ロックに明確な定義はないが、下層・中産階級の憩いの場であった「パブ(居酒屋)で演奏されるようなロック」といったニュアンスがあり、音楽性自体はロックンロールからカントリー、リズム&ブルースにいたるまで幅広く内包している。

レコード契約や大掛かりなツアーをせずに、地元に根ざした活動を行ったミュージシャンが多く、代表格といわれたのはニック・ロウが在籍していたブリンズレー・シュウォーツ、ドクター・フィールグッド、イアン・デューリー、グラハム・パーカーなどである。また、フリップ・シティからソロになったエルヴィス・コステロのように目覚ましいキャリアを積んだアーティストも輩出している。

PUBはただお酒を飲む場所ではない。情報交換やコミュニケーションの場であり、文化を生み出す場所でもある。

パブでのすごし方

イギリスで生まれたパブには独自のスタイルがあり、誰でも気軽に立ち寄り、酒を楽しみ、会話を楽しみ、空間を楽しむための過ごし方がある。

1.キャッシュ・オン・デリバリー
カウンターで注文し、その場で代金を精算します。
飲み物はカウンターで受け取り店内の好きな場所で飲むことが出来ます。
2.ノーチャージ
席料はありません。誰でも気軽にパブを楽しめます。
3.着席orスタンディング
カウンターの周りに椅子席があり、空いていれば好きな席に座れます。また、立ち飲み(スタンディング)もOK。店内のどこでも自由に過ごせます。
4.コミュニケーション
本来パブとは“パブリックハウス(公共の家)”の略称なので、誰でも自由なコミュニケーションをとることが出来ます。各種のイベントを開催したり、大型モニターを設置しているパブも数多くあります。

英国メニューに関する知識(ビールの分類)

1.自然発酵ビール
発酵を司る酵母を特に摂取せず、空気中の微生物に発酵工程を委ねる特殊なタイプ。ベルギーのランビックビールが代表。
2.上面発酵ビール
発酵を常温(13~38度前後)で行い、発酵中に炭酸ガスと一緒に酵母が液の上面に浮いてくるタイプ。下面発酵に必要な冷蔵技術が普及するまでは、ほとんどのビールがこのタイプであった。
伝統的製法のクラシックタイプといえ、イギリス、アイルランド、ベルギー等に多いスタイル。下面発酵に比べて香り・風味が強く、フルーティなものが多い。
3.下面発酵ビール
19世紀に冷蔵技術が開発され低温(5~10度)で発酵を行い、酵母は下方に沈殿する。下面発酵ビールの特徴は穏やかな風味、喉ごしの良さ、シャープな切れ味であり、それらを語源としてラガービールと呼ばれていた。
その後、下面発酵で醸造し、低温貯蔵期間を経て出荷されるビール(日本を含めほとんどの国の主流ビール)全般をラガービールと称すようになった。

イギリス、アイルランドの代表的ビール

1.バス ペールエール
ペールエール発祥の地、バートン・オン・トレント生まれ。 バートン・オン・トレントと呼ばれる小さな街で生まれた、ペールエールの成功を真似て作られ、国内のパブを中心に消費されたビターエールがエールの代表として知られる。
イギリスでは上面発酵ビール全般をさす場合と、スタウトやポーターと呼ばれる濃色系のものを除いたビール全般をさす場合がある。ビール造りに使われる銘水(ミネラル豊富な硬水)に由来する飲みごたえとエール特有のフルーティな香りが特徴のバス ペールエールは、喉ごしもスッキリで日本人にも受け入れられやすいタイプのエール。英国御用達ビールとしても知られる、伝統的製法によるイギリスタイプの上面発酵ビール。
バス社の赤い三角マークは世界最初の登録商標である。
2.ギネス
アイルランドのダブリン生まれ。ギネスブックで知られるギネス社が世界初のスタウトビールとして製造。名実ともに世界No.1スタウトとして愛飲され、英国、アイリッシュパブには欠かせない必須アイテムとなっている。
ベルベットとも評されるキメ細やかでクリーミーな泡立ちが最大の特徴で、麦芽やキャメルのような風味に始まり、最後にはローストされた強い苦みを愉しめる癖になる味。黒い色から濃いイメージを受けるが、飲んでみるとドライで軽い。この意外性もギネスの魅力。
当初ストロングポーターと呼ばれたギネスも課税対策から麦汁濃度を下げ、苦みを押さえたライトタイプに改良され、ドライスタウトと呼ばれるようになって、今日に至っている。
3.ニューキャッスル
イングランド北東部、造船や炭坑で栄えた、ニューキャッスルに生まれたブラウンエール。ほどほどのコクと甘みがあり、苦みは弱い。

その他英国ドリンク

1.ジントニック
カクテルの中で、最もポピュラーと言えるのがこのジントニック。熱帯にあるイギリスの植民地で働くイギリス人達の、暑気払いや食欲不振を防ぐキニーネを配合した保健飲料トニックウォーターに、ジンを入れてみたら驚くほどおいしかったことから、第二次大戦後世界的に広まり、今では最も有名なカクテルとなった。ジンの中では、今なおロンドンで蒸留されている唯一のプレミアムジン「ビーフィーター」が有名。1820年以来、変わらぬレシピを守り続けているビーフィータージンは、 英国王室の近衛兵をシンボルにもつロンドン・ドライ・ジンの代表である。ちなみに、当時の近衛兵には牛肉が支給されていたため、牛肉を食べる人(BEEF EATER)という愛称で呼ばれていた。創始者ジェームズ・バロウは、力強いジンのイメージを具現化する名前として「ビーフィーター」と名づけた。
2.シングルモルトウィスキー
法律によって決められたモルト(二条大麦)のみを原料に一つの蒸留所で造られ樽熟成させたウィスキーの事。
他の蒸留所のウィスキーは一切混ぜ合わせていないので、その味わいは産出される蒸留所の土地により全く異なり、地域由来の水・気候・風土と職人の頑固なこだわりがあり、各土地ならではの特色を楽しむ事ができる。
3.グレンフィディック
世界で一番飲まれているシングルモルト。
華やかで洗練された風味が持ち味の、スペイサイド地方のシングルモルトの代表格。個性の強いシングルモルトの中ではスムースで軽い口当たりと、フルーティな香りが、一般に広く受け入れられている。

シングルモルトの楽しみ方

1.トワイスアップ(TWICE UP)
氷を入れず、モルトと水を1:1で割った少し濃い目の水割りのこと。モルトの「香り」「個性」を知るのに最適な飲み方。
2.フロート(FLOAT)
氷水の上に、モルトを浮かべるように静かに注ぐ。最初はストレート、次にロック、最後は水割りと1杯で味の変化を楽しめる。
3.ストレート(STRAIGHT)
モルトの深みをじっくりそのまま味わって。
4.オン・ザ・ロック(ON THE ROCKS)
氷が徐々に解け、味も風味も変わっていくのを楽しむスタイル。
5.ミスト(MIST)
ミストは霧の意。グラスの表面が白く霞むのがネーミングの由来。変化する味わいと香りを爽やかに楽しむスタイル。
6.ハイボール(HIGHBALL)
ソーダ水で割った爽快感があふれる飲み方。モルト・デビューの方にもおすすめ。

ウィスキーとイギリスの歴史

ウィスキーの起源は中世までさかのぼる。錬金術が発達する過程で、偶然生まれたその液体は不老長寿の効果があると信じられ、ラテン語で「Aqua vitae -アクアヴィテ-」(生命の水)と呼ばれる。

やがて、その技術はヨーロッパの北方に伝わり、その地で飲まれていたビールを蒸留して作られるようになり、スコットランドとアイルランドの古語であるゲール語で「Uisge beatha -ウィシュゲ・ベーハ-」(生命の水)と呼ばれ、のちに「WHISKY -ウィスキー-」という言葉へと変化しました。

初期のウィスキーは熟成を行わない無色透明で、味も香りも荒々しいものでした。18世紀に入って、イングランドはスコットランドを併合し、政府はウィスキーに対する関税を一気に引き上げました。それまでウィスキーを造っていたスコットランドの農民は、イングランド政府に支払う酒税を免れるために、密造したウィスキーをシェリーの空き樽に入れ、山の奥に隠したのです。するとウィスキーは、樽の中で熟成され、琥珀色でまろやかな味わいと華やかな香りをもったのです。

スコッチウィスキー

シーバスリーガル
英国王室御用達の認可を受けたスコッチのプリンス的存在。フルーティな風味があり、なめらかな味わいのシングルモルト「ストラスアイラ」を核にブレンドされ、豊潤な香りと深くクリアな味わいが魅力のプレミアムスコッチ。

英国の代表的なフード

イギリスの代表的な家庭料理「フィッシュ&チップス」。

フィッシュは、コッド(鱈)が主で、フリッターに近いサクサク衣で揚げられている。チップスは、ポテトを揚げたもの。フィッシュ&チップスには、自分で好きなだけ塩とモルトビネガー(酢)をかける。

このソルト&ビネガーの匂いが食欲をそそる。伝統的な英国No.1ブランド「サーソンズ」のモルトビネガーも忘れてはいけない。この名わき役は、酸味の少ないマイルドな味。何よりもビールがどんどん進むはず。